大火揚（おおびよ）は、平安末期の治承四年（1180）、都から当地に流された藤原師経の一行を、里人たちが大篝火を焚いて迎えた故事に因み、旧暦十一月十三日の夜に行われます。

ヤスエモン家とショウベエ家、氏子総代が集まり、火を点けます。 かつては、農家が持ち寄った茅を高く積み上げて燃やしました。 現在は、周辺は住宅街で、郊外の農家に頼んで藁を入手し、火災防止のため、少量だけ燃やしています。

御手洗（みたらし）の流れの西側で、赤々と燃え上がる篝火。 都から遠く下総の地に到着した師経の一行は、失意の中、この火をどのような想いで見たのでしょうか。

830年の歳月が流れても、いにしえの先人を敬う里人の心は変わりません。 毎年、迎えの大火揚と、赦されて都に帰る師経の一行を送った故事に因む「お舟流し」（7/15）の行事が続けられています。

静かに炎が小さくなって、いよいよ神事も終わりに近づきます。 いつまでも赤々と残る火種は、失意の師経を暖かく迎えた里人の心そのものだったような気がしました。